現場取材や農業従事者の手記、農機具販売店へのヒアリングを通じて浮き彫りになったのは、自走式草刈機を買って後悔した理由の大半が「作業中」ではなく「保管・運搬・圃場選定」の段階で起きているという冷徹な事実です。肩掛け式刈払機とはまったく異なる物理的制約を認識しないまま購入に踏み切ることで、期待は落胆へと反転します。
第一の落とし穴は「総重量と運搬の過酷さ」です。一般的な自走式草刈機の重量は40kg〜130kgに達します。肩掛け式(約5kg)の感覚で導入したものの、「軽トラックの荷台にアルミブリッジを使って積み下ろしする作業自体が怖くて腰を痛めた」「畦道まで段差があり、自力で現場まで下ろせない」という声が多数寄せられています。特に高齢ドライバーにとって、傾斜したスロープ板の上で重量級マシンを操作するのは転落事故のリスクを伴う危険な作業です。
第二の要因は「傾斜角度と横転リスクの誤認」です。水田の畦や道路の法面(のりめん)は、目測以上に急傾斜であることが珍しくありません。平地用の車輪型モデルを法面で稼働させると、地面を捉えきれずに滑落したり、重心を崩して作業者側に横転したりする事故が発生します。独立行政法人等の農作業事故統計でも、歩行型自走草刈機の傾斜地での横転・挟まれ事故は毎年上位に挙がっています。
第三は「メンテナンス頻度と維持コストの読みの甘さ」です。石や空き缶を巻き込んだ際の衝撃は肩掛け式の比ではありません。刃の摩耗や変形、Vベルトの緩みや破断、エアクリーナーの目詰まりなど、定期的な保守を怠れば1〜2シーズンで不動機と化します。こうした機械管理の負荷を軽視した結果、「手軽に刈れるはずが、かえって手間が増えた」という後悔につながっています。