「母乳育児は1日あたり約500kcalを消費する」という定説は広く知られています。しかし、臨床現場や助産師のカウンセリングデータが示す現実は異なります。完母なのに痩せないと訴える女性の体内では、授乳を維持するために分泌されるホルモン「プロラクチン」が強力に働き、母体を飢餓から守るために体脂肪を蓄え込みやすい状態へと生体システムがシフトしています。
さらに深刻なのが、夜間授乳や夜泣きによる慢性的な睡眠不足です。睡眠時間が5時間を切る状態が続くと、食欲抑制ホルモンであるレプチンが急減し、食欲増進ホルモンのグレリンが急増します。この結果、本人の意思とは無関係に糖質や脂質を猛烈に欲する脳内環境が作られます。「育児の合間に無意識につまんでしまう」「お腹が空いて甘いパンや白米をドカ食いしてしまう」現象は、意志の弱さではなくホルモンバランスの乱れによる生理反応です。
また、妊娠中に落ちた筋肉量と運動不足によって基礎代謝低下が起きている状態へ急激な食事制限を重ねると、甲状腺機能が省エネモードに切り替わり、消費カロリーそのものが激減します。これが、過酷な食事制限をしても1グラムも体重が動かない決定的なメカニズムです。