中島健郎氏は世界最高峰のクライマーであると同時に、日本屈指の山岳カメラマン・撮影者としても広く知られていました。高所登山の極限状態にあってもカメラを手放さず、自身が息を切らしながらも他者の挑戦を記録し続ける技術は、まさに超人的な領域に達していました。
その実力が広くお茶の間に知れ渡ったのが、NHKの人気ドキュメンタリー番組『グレートトラバース』シリーズです。アドベンチャーレーサーの田中陽希氏が挑んだ「日本百名山ひと筆書き」「二百名山」「三百名山」の旅において、中島氏はメインカメラマンとして重い機材を背負いながら並走しました。過酷な稜線や悪天候の中でも田中氏の前を走り、息を呑むような大自然の映像を捉え続けた姿は、多くの視聴者に深い感動を与えました。
中島氏がファインダー越しに見つめていたのは、単なる険しい風景ではなく「山と人間の調和」でした。登山者の一瞬の表情や朝焼けに染まる雪稜の美しさを切り取った彼の写真は、数々の山岳雑誌の表紙を飾り、写真家としても高い評価を得ていました。