結論から整理すると、伝統的な国語教育や辞書編纂の基準において、「固定概念」は誤用(混種語・俗用)と位置づけられています。本来の正しい語彙は「固定観念」、あるいは「既成概念」です。
なぜ本来存在しなかった「固定概念」という言葉が、これほどまでに世の中に浸透したのでしょうか。国語辞典編纂者や言語学者の見解を紐解くと、人間の認知と語彙の構造的な混線が浮かび上がってきます。
言葉の成り立ちを見ると、人の頭の中にこびりついて離れない強固な考えを指す「固定観念」と、社会ですでに広く認められている一般的な共通認識を指す「既成概念」という、2つの類似した言葉が存在します。この2つが日常会話の中で無意識に掛け合わされ、「固定」+「概念」という合成語が自然発生的に定着してしまったと分析されています。
日本を代表する中型国語辞典である『広辞苑』(岩波書店)の最新版を確認しても、「固定観念」は独立した見出し語として詳細な語釈が掲載されている一方、「固定概念」は見出し語として採録されていません。三省堂などの現代語の採録に積極的な一部の新語系辞典では「俗用」「誤用から広まった語」として補足解説が添えられる動きも見られますが、正統な語彙としての認定には至っていないのが実態です。