2008年、動画共有サイト「ニコニコ動画」に自らの歌声を初めてアップロードしたとき、ここまでの未来を予見していた者は少なかったはずだ。当時はまだ「歌い手」という言葉自体がサブカルチャーの片隅で使われ始めたばかりの黎明期。録音環境も限定的で、手探りのなかでのスタートだった。
だが、彼の声には一聴して耳を捉える特別な質感があった。力強さと優しさが同居する独特の倍音成分。リスナーの口コミによって再生数は瞬く間に跳ね上がり、気づけばネットシーンの第一線を走る存在となっていた。変化の激しいネット社会において、18年間にわたり一線で支持され続ける例は極めて稀だ。それは流行に乗ったからではなく、彼自身が流行の核であり続けたからにほかならない。