脳の底面、脳幹や重要血管・脳神経が複雑に絡み合う領域に発生する「頭蓋底腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫、脊索腫など)」は、脳外科手術の中でも最高峰の技術が要求される聖域です。この領域において「頭蓋底腫瘍手術名医の真相」を追跡すると、一般に信じられている名医神話の危うさが見えてきます。
昭和から平成にかけては、超人的な集中力と手技で20時間以上の難手術を単独で完遂する「孤高のゴッドハンド」がメディアを席巻しました。しかし、現在の先端医療現場において、単独のスター医師によるワンマン手術はむしろリスク要因とみなされるケースが増えています。
頭蓋底病変の摘出では、微細な神経を温存するために術中神経モニタリングの専門技師が神経伝導を常時チェックし、耳鼻咽喉科医と合同で鼻腔からアプローチを行い、術後の頭蓋底再建には形成外科医が参加します。一人の医師の勘に頼るのではなく、複数領域のスペシャリストがチームとして機能しているかどうかが、全摘出率と顔面神経麻痺や聴力障害といった重篤な後遺症の回避率を左右します。メディア露出の派手さではなく、日本頭蓋底外科学会などの学術集会でコンスタントに難治症例の手術手技や合併症対策を報告している指導的立場の医師が在籍する施設を選ぶことが、最も確実な防衛策です。
また、脳梗塞緊急受け入れ病院関東の救命現場においても同様の構造があります。脳梗塞は発症から治療開始までの「タイム・イズ・ブレイン(時間は脳)」。t-PA静注療法は発症から4.5時間以内、カテーテル血栓回収術は原則24時間以内とされますが、1分早まるごとに後遺症なき回復率は劇的に跳ね上がります。有名な大学病院であっても、夜間にカテーテルチームを招集するのに1時間以上要する病院より、24時間院内待機体制を敷いている地域の急性期脳卒中センターの方が命を救う力において勝るケースがあるという事実は、広く知っておくべき盲点です。