キメラアント直属護衛軍の3人は、いずれも王に対して絶対の忠誠を誓っていました。しかし、その忠誠のベクトルを比較すると、シャウアプフの忠誠心だけが異常な異質さを放っています。ネフェルピトーは「王の望むがまま」を肯定し、モントゥトゥユピーは強者との戦いを通じて「個」としての敬意と信頼を深めました。対照的にプフが愛したのは、目の前にいる生身のメルエムではなく、「絶対強者として全生物の頂点に君臨する、冷酷非情な王という概念」そのものでした。
その純粋すぎる理想像に亀裂を入れた存在こそが、軍儀のチャンピオンである人間の少女・コムギです。王がコムギとの対話を通じて「個の尊厳」や「慈愛」に目覚めていくプロセスは、プフにとって種族の破滅であり、絶対悪にほかなりませんでした。王の人間的な成熟を「毒に侵された堕落」と見なしたプフは、あろうことか主君の意志に背いてでもコムギを秘密裏に殺害するという危険な独断専行へと突き進みます。
「王のために、王の心を殺す」という激しい矛盾。この認知的不協和こそが、彼を狂気へと駆り立てたエンジンの正体です。王が本来の冷酷さを取り戻すならば、己の命が反逆罪で討たれても構わないという自己犠牲的な献身と、主君の自己決定権を一切認めない傲慢な支配欲が同居していた点に、プフというキャラクターの底知れぬ業が表れています。