2021年11月に公開された劇場版『きのう何食べた?』は、興行収入14億円を突破する大ヒットを記録しました。映画という大スクリーンへの進出にあたり、物語に新たなスパイスを加えたのが、SixTONESの松村北斗氏が演じた美容師・田渕剛の存在です。
田渕はケンジの勤める美容室のスタッフであり、誰に対しても物怖じせずズケズケと本音をぶつける今どきの若者。映画版において、ケンジがシロさんとの関係に不安を抱くきっかけを作るキーパーソンとして鮮烈な印象を残しました。松村氏の繊細かつ飄々とした芝居は映画ファンからも高く評価され、続く2023年のシーズン2でもレギュラーとして続投しています。
シーズン2では、アラフィフに差しかかった二人の「加齢に伴う健康問題」「親の介護や実家の処分」「パートナーの法的な権利」といった、より切実なライフステージの変化が描かれました。これに伴い、登場するゲスト陣も重厚さを増しています。
特に圧巻だったのは、母親役の梶芽衣子さんの演技です。かつて同性愛に対して激しい拒絶反応を示し、新興宗教にすがるほど動揺していた母親が、長い年月をかけて息子のセクシュアリティを「頭では理解しようと努めるが、生理的な戸惑いを完全には拭い去れない」という複雑なグラデーションを見事に表現しました。梶さんが見せる、優しさと残酷さが背中合わせになった母親の眼差しは、本作が単なるファンタジーではなく、現実の社会を鋭く照射していることの証左です。