稲川会の歴史を語る上で、創始者である稲川聖城の存在を外すことはできない。熱海を拠点に興された組織は、昭和から平成にかけて圧倒的な武力と結束力を誇り、関東の裏社会における絶対的な覇者として君臨した。義理と人情を標榜した昭和のヤクザ像は、時代の潮流とともに変容を余儀なくされていく。
暴力団対策法や暴力団排除条例の施行により、裏社会を取り巻く環境は激変した。資金源の根絶を目指す捜査網が狭まる中、組織の生存をかけた近代化への足踏みが始まった。暴力と恫喝の時代から、知略と経済力を重んじる新時代へ。その過渡期において台頭したのが、山川一家のトップを経て六代目会長へと登り詰めた男だった。