本作の圧倒的な緊張感を支えているのが、映画界を代表する実力派キャスト陣による凄まじいアンサンブルです。主役のローレンス枢機卿を演じたレイフ・ファインズは、自身の信仰心に揺らぎを抱えながらも、職務を全うしようと葛藤する男の苦悩を、繊細かつ重厚な佇まいで体現しました。わずかな視線の揺れや沈黙の演技だけで観客を引き込む姿は、まさにキャリア最高の演技と称賛されています。
ローレンスと志を同じくしながらも政治の波に呑まれていくベッリーニ枢機卿役にはスタンリー・トゥッチ、野心を隠して立ち回るトレムブレイ枢機卿役にはジョン・リスゴーがキャスティングされ、名優同士の火花散る舌戦が劇中の緊迫感を極限まで高めています。
さらに、枢機卿たちの身の回りの世話を一手に引き受けるシスター・アグネス役のイザベラ・ロッセリーニが見せる、言葉少なげながらも決定的な存在感も見逃せません。男性中心の閉鎖空間において、真実の鍵を握る女性としての鋭い眼差しが、物語に絶妙な奥行きを与えています。