フィギュアスケート界において、サン=サーンスの本作は古くから名プログラムを生み出してきましたが、その頂点として世界中に衝撃を与えたのが羽生結弦氏の2021〜2022年シーズン・ショートプログラムです。使用された音源は、世界的ピアニスト・清塚信也氏が羽生氏のために特別にピアノソロへと編曲・演奏したオリジナルバージョンでした。
羽生氏は当時のインタビューやドキュメンタリーにおいて、「自らの内面にある葛藤、孤独、そしてそこから這い上がる情熱」をこの旋律に投影したと語っています。全日本選手権2021で見せたノーミスの圧巻の演技(111.31点)では、ピアノの繊細な打鍵と鋭いアタックに完全に同期したステップとジャンプを披露し、フィギュアスケート史に刻まれる伝説となりました。
北京五輪の舞台では、氷上の小さな穴(スクラッチ)にエッジが取られるという不慮のアクシデントに見舞われながらも、続く演技を完璧に滑り切る強靭な精神性を発揮。プロ転向後の単独東京ドーム公演『GIFT』やツアー『RE_PRAY』でも再演され、困難に立ち向かう人間の気高さの象徴として、今なお多くのファンの心を揺さぶり続けています。