旅の大きな醍醐味である食事においても、伝統的な和食会席の枠組みを鮮やかに飛び越えて見せる。ダイニングで提供されるのは、信州の豊かな自然が生み出す食材を主役にした薪火料理を中心とするイノベーティブ・ガストロノミーだ。地元の農家が手塩にかけて育てた有機野菜や、信州産の地鶏、新鮮な川魚が、薪の香ばしい燻煙を纏ってテーブルへと運ばれる。
シンプルでありながら素材本来の力強い旨味が引き出された一皿一皿は、身体の奥底からエネルギーを満たしてくれる。合わせるナチュラルワインや地元産の日本酒とのペアリングも秀逸だ。現代版の「湯治」とは、単に湯に浸かることではなく、食、読書、そして土地の気候に五感をひらく全人的なリフレッシュ体験なのだと思い知らされる。