東京オリンピックで獲得した銀メダルは、彼女のキャリアにおける大きな節目だった。しかし、金メダルに届かなかった悔しさと誇りが交錯したあの瞬間から時間を重ねる中で、彼女の中にある「形」の意味はより深く熟成されている。
形とは単なる動作の組み合わせではない。呼吸、眼力、間合い、そして内面からにじみ出る気魄。それらが一つになった時、観客は息を呑むような感動を覚える。引退から2年が経過した今、勝敗という数値化された世界から解放されたことで、彼女の演武は表現力と精神性において新たな領域へ到達したと語る関係者は多い。
「勝つための形から、人の心を揺さぶる形へ」。言葉で言うのは容易いが、そこには過酷な現役生活を駆け抜けた者だけが到達できる境地が存在する。