長テーブルに腰掛け、長靴姿のセリ人とスーツ姿の会社員が肩を並べる。かつて市場食堂といえば「知る人ぞ知る男たちの職場」だったが、その風景は大きく変わった。海外からの個人旅行客がスマートフォンを片手に写真を撮り、隣の老夫婦がおすすめの食べ方を身振り手振りで教える光景があちこちで見られる。
多様な人々が同じテーブルを囲み、湯気の立つ味噌汁を啜る。洗練された現代的レストランにはない人間味あふれる温かさと適度な雑多感が、居心地の良さを生み出している。単に食事をするだけでなく、その土地のカルチャーに触れる体験としての価値が再評価されているのだ。