物理学者であり文筆家でもあった寺田寅彦は、かつて日本の自然災害と人間社会の関わりを深く洞察し、「天災は忘れた頃にやってくる」という有名な警句を残した。彼の精神を受け継ぐ現代の科学ジャーナリズムは、単なる注意喚起にとどまらず、災害のメカニズムを可視化して市民へ伝える役割を担っている。
気象科学の分野では、北川裕和氏をはじめとする気象・放電研究者たちが雷雲の内部構造や電荷配置の解析を飛躍的に進化させてきた。かつては予測不可能とされた落雷の瞬間も、最新のアレイレーダーや電波観測技術によって、数十秒前の局所的警戒が可能になりつつある。科学が解き明かした事実は明白だ。木は身を守る盾ではなく、雷を引き寄せる危険な誘雷針にすぎない。