冬になるとレジ周辺に漂っていたあの特有の香り。それが失われた背景には、コンビニエンスストア業界が抱える極めてシビアな現場の事情がある。従来の什器販売は、毎日の煮込み作業や具材の補充、廃棄管理、さらには閉店後の徹底的な洗浄作業など、店舗スタッフに膨大なオペレーション負荷を強いていた。深夜の人手不足が常態化するなか、什器の維持そのものが限界に達していたのだ。
流通アナリストの渡辺広明氏は「レジ横おでんは冬の来店動機を作る強力なマグネット商品だったが、廃棄ロスと清掃コストのバランスが崩れ、現場の負担が限界を超えていた。現在のパウチ化やカップ化は、単なる省力化ではなく、品質を均一に保ちながらフードロスを極小化するための必然的な構造転換だ」と指摘する。
さらに、衛生意識の変化も拍車をかけた。飛沫防止カバーを取り付けるなどの対策は講じられたものの、個包装された商品を求める消費者の安心志向は決定的だった。結果として生まれた「パックおでん」は、出汁が煮詰まって塩分濃度が高くなる課題を解消し、いつでも作り立てのバランスを味わえるという予期せぬメリットをもたらした。