永作博美の真骨頂は、言葉を失った瞬間の「沈黙」にある。主演映画『さいはてにて〜やさしい香りと待ちながら〜』では、能登半島の突端で珈琲店を開く女性の孤独と再生を、淡々とした日々の営みを通して演じ切った。
豆を挽き、湯を注ぎ、静かに海を眺める。劇的なカタルシスを排した構成でありながら、画面から片時も目が離せないのは、彼女の身体が空間そのものと共鳴しているからに他ならない。傷を抱えた他者と静かに寄り添い合う上質なヒューマンドラマにおいて、余白を語る彼女の表現は映画という芸術の豊かさを改めて提示してみせた。