彼女の代表作「自分の感受性くらい」は、教科書にも掲載され、今なお多くの人々に暗唱される名篇だ。「ぱさぱさに乾いてゆく心を/ひとのせいにはするな」という痛烈なフレーズは、一見すると冷徹な自己責任論のようにも読める。しかし、その根底に流れているのは苛烈な断罪ではなく、自分自身の尊厳を決して他人に明け渡してはならないという、深甚な人間愛と励ましだ。
毅然としたパブリックイメージの一方で、プライベートにおける彼女は、極めてチャーミングで生活を愛する生活者だった。東京・西東京市(旧保谷市)の自宅の庭で草花を慈しみ、訪れる編集者や友人には季節の料理を手際よく振る舞った。最愛の夫を早くに亡くした後も、孤独に溺れることなく、自炊の台所に立ち、凛とした生活のリズムを崩さなかったという。弱さを知るからこそ、甘えを退ける。その知られざる日常の温もりこそが、あの峻厳な詩篇を生み出す土壌となっていた。