銀行のATMがスムーズに切り替わった一方で、なぜ個人経営の飲食店や街角の自動販売機では新紙幣が使えないトラブルが続いているのでしょうか。そこには、単なる作業の遅れにとどまらない、中小事業者にとっての「死活問題」が存在しています。
券売機で新紙幣が使えない理由の核心は、莫大な改修費用と費用対効果の悪化です。ラーメン店や定食屋で使用される高機能な押しボタン式・タッチパネル式券売機の場合、紙幣識別ユニット(ビルバリデータ)の交換費用だけで1台あたり30万〜60万円、本体ごとの買い替えになれば150万〜200万円以上の出費を強いられます。原材料高や人件費の高騰で利益率が圧迫されている中小店舗にとって、紙幣のためだけに数十万円のキャッシュアウトを行うのは極めて重い負担です。
さらに、自動販売機の新紙幣改修遅れにおいては、深刻な半導体不足と作業工数の限界が重なりました。全国に200万台以上存在する飲料自販機の識別機を一斉に刷新するのは物理的に不可能です。メーカー側は売上の高いオフィスビル内や駅ナカの自販機を優先し、売上規模の小さい郊外や路面の自販機は「後回し」、あるいは「撤去や新紙幣非対応のまま放置」という選択を余儀なくされています。
加えて、決定的な後押しとなったのが「キャッシュレス決済の急速な普及」です。高額なコストをかけて新紙幣対応機に更新するくらいなら、補助金を活用してQRコード決済や交通系IC対応のキャッシュレス端末を導入したほうが、インバウンド需要も取り込めて実利が大きいという経営判断が現場で加速しています。