映画館の巨大スクリーンと立体音響で描かれる劇場版「鬼滅の刃」無限城編において、ファンの視線が最も集中しているのが狛治と恋雪の別離と再会のシークエンスだ。原作漫画で読者の涙腺を決壊させたあの名場面が、アニメーション表現の極地でいかに昇華されるのか。先行して議論を呼んでいるのは、原作の骨格を守りつつ加えられるであろう「間」と色彩の演出である。
炭治郎と義勇による猛攻の果て、頸を切り落とされながらも再生しようとする猗窩座の肉体を内側から止めたのは、記憶の奥底から呼びかける恋雪の声だった。映画版では、業火に焼かれるような修羅の空間から、かつて二人で見上げた夜空と満開の花火へと視界が反転する演出が予想される。原作のコマ割りでは表現しきれなかった、吐息の震えや涙が零れ落ちる微細な光の粒子。さらに、二人が炎の中で抱き合いながら地獄へと歩みを進める結末に、どのような旋律が重ねられるのか。劇場用の音響設計だからこそ可能になる「沈黙の重み」が、観客の感情を激しく揺さぶることは間違いない。