なぜ、全く性質の異なるふたつの世界で同じ「ネコ」という単語が象徴的に採用されたのだろうか。
一見すると無関係に見える警察用語の「泥棒」と、LGBTQ+文化における「受け(寝役)」の概念。しかし、言語構造の観点から両者を比較すると、非常に興味深い共通項が浮かび上がる。どちらも「表の社会(表層)からは見えにくい場所」で機能し、「音を立てない」「しなやかに身を隠す」「受容する」という猫の身体的・生態的イメージに依存している点だ。
犯罪捜査の最前線で使われる「泥棒」の符牒も、夜の街のコミュニティで育まれたタチ・ネコという関係性の表現も、社会の周縁で生まれた言葉が独自の進化を遂げた例である。日常会話の中に溶け込みながらも、一歩足を踏み入れなければその真意に辿り着けない。それこそが、この言葉の持つ妖しくも豊かな魅力と言えるだろう。