「ピアノ三重奏曲 イ短調」というタイトルを持つこの作品の魅力を解き明かす鍵は、変則的なリズム構造と絵画的な響きにある。第1楽章で提示される特徴的な8分の8拍子の主題は、ラヴェルのルーツであるバスク地方の伝統舞踊「ショルツィコ」のリズムから想を得たものだ。
印象主義音楽の潮流を感じさせる色彩豊かな和声は、重厚な弦のピチカートやピアノの流麗なアルペジオと見事な融合を見せ、独特の浮遊感を生み出す。第2楽章「パントゥーム」における東南アジアのマレー詩形を模した緻密な対話、第3楽章「パッサカリア」の重厚な変奏、そして第4楽章の爆発的なフィナーレに至るまで、名曲の構造には徹底した美意識が敷き詰められている。