劇場に立つ若手芸人の現場観察を行うと、歯の欠損にまつわるエピソードは今なお頻繁に語られています。空気階段の鈴木もぐら氏や岡野陽一氏をはじめとする「クズ芸人」ブームの際にも、虫歯の放置や歯周病の進行を笑いに昇華させる場面が多々見受けられました。しかし、SNSや掲示板を中心とする歯がない芸能人に対するネットの反応は、この数年で明らかな地殻変動を起こしています。
かつて昭和から平成初期のテレビ現場では、歯がない容姿は「無頼派の証」「貧乏の象徴」として無条件の爆笑を生む記号でした。視聴者側も一種の見世物的な面白がり方を許容していた側面があります。ところが2020年代半ばを境に、SNS(XやInstagram)やネットニュースのコメント欄には以下のような意見が急増しています。
「笑い話として聞いているけれど、見ているだけで口の中が痛くなってきて辛い」「咀嚼できずに消化器系を壊すのではないかと心配になる」「単なる不潔アピールに見えてしまい、食事時の番組では見たくない」。
視聴者のオーラルリテラシーが向上した結果、歯の欠損は「愛嬌ある個性」から「純粋な健康被害・生活習慣の破綻」として冷ややかに受け止められるケースが増加しています。テレビ局側もスポンサーへの配慮から、過度に不衛生な口元をアップで映す演出を抑制する傾向にあり、若手芸人にとっても「歯がないこと」はもはや恒久的な武器ではなく、早期に脱却すべき暫定的な状態へと位置づけが変化しています。