耳の内部にまったく異常が見当たらないにもかかわらず、咀嚼や嚥下の際にバリバリ音が鳴り続けるケースがあります。その代表例が顎関節症と耳のバリバリ音の連動です。顎関節は外耳道のすぐ前方に位置しており、咀嚼筋の一部である「内側翼突筋」や「外側翼突筋」は、耳管の開閉を司る「口蓋帆張筋」と神経支配および筋膜の連続性を共有しています。
食事の際に片側の奥歯だけで噛む癖がある人や、就寝時の歯ぎしり・食いしばりがある人は、顎関節を支える関節円板が前方にずれ、咀嚼や嚥下のタイミングで関節部が擦れ合います。その振動が骨を通じて直接内耳・中耳へ伝達される結果、まるで耳の奥で骨がバリバリ鳴っているかのように錯覚するのです。耳鼻科で「耳に異常なし」と診断された患者が、歯科・口腔外科で顎関節症の治療を受けたところ、長年のバリバリ音が劇的に消失した事例は数多く報告されています。
さらに見過ごせないのが、ストレスによる耳の異音です。慢性的な精神的ストレスや過労、睡眠不足に晒されると、交感神経が過剰に興奮して末梢血管が収縮します。耳管周囲に張り巡らされた毛細血管の血流が低下すると、組織の局所浮腫や乾燥を引き起こし、正常な粘液分泌が滞ります。自律神経の乱れによって筋肉が無意識に緊張することも重なり、耳管がスムーズに開閉できなくなる機能不全に陥るのです。
ここで注意すべきネット上の危険な誤解があります。耳が詰まった感じや異音がするからといって、鼻をつまんで力任せに息を送り込む「バルサルバ法(自己耳抜き)」を頻繁に繰り返す行為です。鼻腔内の細菌やウイルスを耳管経由で中耳へ押し込み、急性中耳炎を併発させるリスクがあるほか、脆弱になった鼓膜を破裂させる恐れがあります。医師の指導なしに行う強い耳抜きは絶対に避けてください。