本作のクライマックスを巡っては、今なお「驚きの結末」「スカッとしたけれど深く考えさせられる」といった反響が絶えません。物語の終盤、真野恵里菜演じる主人公・浮島多恵は、念願だったハイスペックなエリートサラリーマン・白石俊平(淵上泰史)からのプロポーズを勝ち取ります。絵に描いたような「専業主婦の座」を手に入れ、華やかな結婚式場のバージンロードを歩む多恵。しかし、その瞬間、彼女の胸に去来したのは歓喜ではなく、底知れない窒息感でした。
俊平が求める「従順で文句を言わず、常に笑顔で夫を立てる理想の妻」を演じ続けることは、自分自身の魂を殺し続けることと同義でした。浮気を繰り返しながらも平然と多恵を支配しようとする俊平の態度、そして何より「この先何十年も本音を押し殺して生きる恐怖」に直面した多恵は、純白のウエディングドレスの裾をまくり上げ、式場から全力で逃走します。この「花嫁逃走劇」こそが、野島伸司脚本が仕掛けた痛快なカウンターでした。
多恵が向かった先は、ローン契約を解除して元の生活に戻っていた刹那ジュン(横浜流星)の部屋でした。単なる「都合のいいストレス発散用のサンドバッグ」として買い叩いていたはずのジュンこそが、唯一自分のドス黒い感情も弱さも全てさらけ出せる相手だったと気付いたのです。ジュンもまた、多恵との日々を通じて彼女の孤独と真摯な本質を理解し、一人の女性として深く愛するようになっていました。
迎えたラストシーンでは、多恵がジュンとの関係を「購入者と商品」という歪な上下関係から完全に脱却させ、対等な人間として共に歩む決断を下します。しかし、単なる甘いおとぎ話では終わりません。多恵はエリートの妻という社会的ステータスをかなぐり捨て、自活する道を選び、ジュンもまた自立した男性として多恵に向き合います。野島伸司が描いた結末の真相は、「他者に人生を委ねる依存(玉の輿信仰)の完全な崩壊」と、「自己責任で選び取る自由な愛の獲得」だったと言えます。