実写化において最大の難関と目されていたのが、羌瘣独特の呼吸法と舞うような剣術「巫舞」の映像表現です。原作で「トーンタンタン」とリズミカルに刻まれる神懸かりのステップを、生身の人間が実写映画のリアリズムの中でどう成立させるのか。下村勇二アクション監督と清野菜名が挑んだアプローチは、徹底したフィジカルとリズムのシンクロでした。
撮影に入る前、清野には約3ヶ月間に及ぶ過酷な肉体改造と剣術トレーニングが課されました。中国武術特有のしなやかな身のこなしと、日本刀とは重心の異なる直剣(緑鶴)の扱いを習得するため、手首と体幹を極限まで強化。撮影現場では、超高速カメラによるハイスピード撮影と、最小限のワイヤー補助を組み合わせ、彼女自身が重力を感じさせない跳躍と連続回転斬りを披露しました。
映画関係者の手記によると、足場の悪い荒野や砂塵が舞い散るセットの中、清野は息を乱すことなくテイクを重ね、カットがかかった瞬間にスタッフから自然と拍手が沸き起こったといいます。原作の持つファンタジーすれすれの身体運動を、アクロバットと舞踊のハイブリッドとして構築したことで、観客は「スクリーンの中に本物の羌瘣がいる」という強烈な没入感を味わうことになりました。