『名探偵コナン』の連載開始は1994年。コミックスを1巻から隅々まで読み込んでも、初期の原作エピソードに「真実はいつもひとつ」という台詞はどこにも見当たらない。原作の工藤新一が口にしていたのは、シャーロック・ホームズの言葉を引用した「不可能な物を除外していって残ったものが…たとえどんなに信じられなくても…それが真相(しんそう)なんだ!!」や、「推理で犯人を追い詰めてみすみす自殺させちまうような探偵は…殺人者と変わらねぇよ」といった文学的かつ重厚な警句だった。
では、あの研ぎ澄まされたフレーズはどこから生まれたのか。当時の制作関係者や読売テレビのエグゼクティブプロデューサーを務めた諏訪道彦氏の回顧録によると、1996年1月のアニメ放送開始にあたり、「子どもから大人まで一瞬で覚えられ、毎週の予告や番組宣伝で強烈なフックとなるキャッチコピー」を模索する中で発案されたのが発端である。
短く、リズミカルで、ミステリーの痛快さを凝縮した言葉――。現場のブレインストーミングから生まれたこの一行は、原作者の青山剛昌氏に提案され快諾を得た。青山氏自身も後のインタビューで「最初アニメで聞いた時は『お、かっこいいな!』と感心した。自分が漫画で描いたわけじゃないのに、いつの間にかコナンの代名詞になっていて驚いたよ」と笑顔で振り返っている。原作とアニメの幸運な化学反応が生んだ、メディアミックス史に残る傑作フレーズと言える。