多くのリスナーが惹きつけられる最大の魅力は、日本的な風情と胸を締め付ける心理描写が同居した歌詞の世界観にあります。一般的な打ち上げ花火ではなく、水面を這うように儚く光る玩具花火「金魚花火」をタイトルに据えた点に、彼女独自の作詞センスが光ります。
歌詞の中では、夏の夜風に揺れながら隣にいる大切な人を見つめる主人公の視線が描かれます。決して手の届かない相手への叶わぬ恋心や、夏の終わりとともに去っていく別れを予感させるフレーズが散りばめられており、「光っては一瞬で消える花火」と「水中でしか生きられない金魚の息苦しさ」が重なり合うダブルミーニングとして機能しています。
実話なのかという議論について本人は具体的な対象を明言していませんが、当時のインタビュー等から「青春時代に誰もが経験する、言葉にできなかった切ない片思いや喪失感」が生々しく投影されていることは間違いありません。情景を過度に説明せず、聴く人それぞれの夏の記憶を呼び覚ます余白を残した構成が、時代を超えて共感を呼ぶ要因です。