本誌の独占取材に応じた是枝裕和監督は、メガホンを取ることを決意した背景について「画面の余白から匂い立つような感情の機微をカメラに収めたかった」と語る。長年にわたり人間の深層を描き続けてきた巨匠が、この物語に注ぎ込む情熱は並々ならぬものがある。
主人公である花屋の店主を演じる佐藤健は、役に生々しい説得力を宿らせるため、撮影前に数ヶ月におよぶ生花の修業を積んだ。「花の茎を切るハサミの感触や手元の所作ひとつで、その人物が歩んできた人生が伝わってしまう」と明かす。現場では監督と俳優陣による即興のセリフ調整が日常的に行われ、緊張感と静かな温もりが同居する奇跡的なカットが日々生み出されている。