神隠しの世界において、ハクは少年と白竜という二つの形態を行き来する。水神の象徴としての白竜は、流麗で美しく、同時に圧倒的な威厳と凶暴さを併せ持つ。宮崎駿監督が描いた竜の動きは、従来の西洋的なドラゴンとは一線を画し、蛇のようにしなやかでありながら神聖な風を纏う。
湯婆婆の命令で銭婆の印鑑を盗み出し、紙の形代(かたしろ)に追われて血を流しながら千尋の元へ逃げ込むシーンは、観客の心に深い傷痕のような記憶を残す。強大な力を持ちながらも、権力者に利用され傷つく神の姿。その痛々しさこそが、彼の存在をより一層切なく、愛おしいものへと高めているのだ。