これほどの傑作が揃っていながら、なぜ2010年のドラマは昼下がりの地上波再放送枠で滅多に見ることができないのでしょうか。ネット上では「作品のテーマが過激だから」「トラブルがあったから」といった憶測が飛び交っていますが、取材データと法的な観点から検証すると、その背景にはドラマ再放送できない理由と真相として極めて現実的な3つの障壁が存在しています。
第1の壁は、「音楽著作権(BGM・劇伴)の契約形態」です。2010年当時のドラマ制作では、地上波の本放送および限定的な再放送のみを想定して洋楽の原盤や特殊な音源が使用されているケースが多々ありました。10年以上が経過した現在、それらの楽曲を地上波で再許諾するための権利更新料は莫大な金額に跳ね上がります。広告収入の減少に直面する現在の地上波ローカル局やキー局の昼帯予算では、再許諾コストを回収することが経済的に不可能な構造となっています。
第2の壁は、「出演者・関係者の引退や契約形態の変更、コンプライアンス事由」です。日本のドラマ再放送には、主たる出演者や所属事務所全員からの「二次利用許諾」を取り付ける慣例が存在します。出演俳優の一部が芸能界を引退している場合、権利継承者との連絡がつかないケースや、過去の不祥事・契約解除に伴って事務所サイドから許諾が下りないケースが発生します。1つの作品に数十人規模のキャストが関わる以上、誰か1人でもクリアランスが取れなければ、地上波というオープンな公共電波に乗せることはできません。
第3の壁は、「放送局のSVOD(定額制動画配信)ビジネスへのシフト」です。現在、民放各局は地上波での無料再放送を乱発するよりも、自社系列の配信プラットフォーム(U-NEXT、Hulu、FODなど)へ独占コンテンツとして配置し、有料会員獲得のキラーコンテンツとして温存する戦略をとっています。地上波で安易に流さないことこそが、コンテンツの知的財産価値を守る防衛策となっているのが現実です。