現場を取材すると、観光客が改札口やバス車内で混乱に陥っている場面にしばしば遭遇します。その多くは、事前のリサーチ不足による誤解が原因です。
特急ロマンスカー差額運賃のリアル
ネット上の質問サイトなどで最も頻出する勘違いが、「フリーパスを持っていればロマンスカーにそのまま乗れるのか」という疑問です。結論から言えば、フリーパスがカバーしているのはあくまで普通乗車券部分のみです。
新宿〜箱根湯本間で特急ロマンスカーを利用する場合、片道あたり1,200円の特別急行券(特急料金)を別途購入しなければなりません。往復利用すれば2,400円の追加出費となります。「乗り放題切符だから全列車に乗れる」と誤認して特急券なしで乗車すると、車内で特急料金を請求されるだけでなく、満席時には指定席に座れないトラブルを招くため細心の注意が必要です。
「小田急系」と「西武系」のバス縄張り争い
箱根エリアにおける最大の移動トラップが、運行事業者の違いです。フリーパスで乗り放題になるのは箱根登山バス(小田急グループ)を中心とする指定路線であり、ライバルである伊豆箱根バス(西武グループ)には一切乗車できません。
箱根湯本駅前や元箱根港のバス乗り場には、両社のバスが数分間隔で交互に入線してきます。車体カラーや行先表示をよく確認せずに西武系の伊豆箱根バスへ乗り込んでしまうと、降車時に全額現金または交通系ICカードでの別途支払いを求められることになります。現場の停留所でも注意喚起がなされていますが、外国人旅行者のみならず国内観光客の誤乗が後を絶ちません。
提携観光施設割引優待の真の価値
見落とされがちなのが、フリーパスの提示で受けられる提携観光施設割引優待の存在です。箱根エリアの約70カ所におよぶ美術館、温浴施設、飲食店、歴史的名所で入場料が100円〜数百円単位で割り引かれます。
例えば、「箱根彫刻の森美術館」や「ポーラ美術館」の入館料が割引になるほか、「箱根小涌園ユネッサン」などの大型スパ施設でも優待料金が適用されます。複数の文化施設を巡るカルチャー志向の旅程であれば、交通機関の運賃差額と合わせてさらに1,000円前後の金銭的メリットを上乗せすることが可能です。