今回のプロジェクトを手がけたのは、京都のテック系スタートアップと伝統芸能の若手演者たちによる合同ユニットだ。彼らが用意したのは、単に映像を眺めるだけのVRではない。
観客は触覚フィードバックを搭載したスーツを着用し、1703年の大坂・曽根崎の森へと足を踏み入れる。夜風の冷たさ、草を踏みしめる感触、そしてお初と徳兵衛が交わす息遣いまでが、驚くほどの解像度で再現される。AIによって制御された登場人物たちは、観客の視線や動きに反応し、その都度セリフのトーンや間(ま)を変化させる。
「まるで自分が、あの心中を止められなかった傍観者の一人になったような感覚だった」。体験を終えた20代の会社員は、興奮冷めやらぬ様子で語った。