では、なぜ企業はわざわざ世界で最も認知されている「Made in China」を避け、「Product of PRC」への表記変更を進めてきたのでしょうか。背景には、国際ビジネスにおけるシビアな3つの構造的要因が存在します。
最大の理由は、消費者の認知バイアス(カントリー・オブ・オリジン効果)の回避です。長年、世界中の市場において「中国製=大量生産の安物・壊れやすい」というステレオタイプが根強く形成されてきました。特にアパレルや服飾雑貨、直接肌に触れる日用品においては、生産国を見た瞬間に購入をためらう消費者が一定数存在します。そこで、一見して直感的に「中国」と結びつきにくいPRCを用いることで、購入時のネガティブな拒否反応を和らげる心理的アプローチが採用されたのです。
2つ目は、欧州系グローバル企業によるブランドイメージのコントロールです。イタリアやフランスの有名アパレルブランドであっても、縫製や生地の加工工程の多くを中国の委託工場に依存しているのが現代サプライチェーンの実態です。高価格帯のアイテムに堂々と「Made in China」と記されることを嫌う欧米の企画元が、より形式的で記号化された「Made in PRC」「Product of PRC」のタグをサプライヤーに指定する事例が相次ぎました。
3つ目は、中国の製造業自身が推し進める「脱・下請け」のポジショニング戦略です。深圳や東莞を中心とする製造集積地は、いまや世界最先端のハードウェア開発都市へと変貌を遂げています。単なる「世界の安価な工場」から脱却し、高い技術力を備えたハイテク生産拠点としての自負を示す文脈で、あえて格式ある国名略称であるPRCを掲げるメーカーも登場しています。