箱根駅伝における「山の神」という呼称は、決して乱発される安売り言葉ではない。初代とされる順天堂大学の今井正人が切り拓いた山登りの概念を、破壊的なスピードで別次元へ引き上げたのが柏原だった。今井が険しい坂を力強く登坂するパイオニアであったなら、柏原はタイムの概念そのものを書き換えた革命児だった。
そして後年、青山学院大学の神野大地が軽やかなピッチで新たな歴史の扉を開いた。関東学生陸上競技連盟によるコース再計測や距離変更を経てもなお、歴代のクライマーたちが比較される基準点には常に柏原の名がある。傾斜に立ち向かうアプローチは三者三様だが、極度の重圧下でチームの命運を一身に背負い、山中で他を圧倒するという一点において、彼らは共通のオーラを放っていた。