敷地内に広がる「安曇野ちひろ公園」の一角でひときわ目を引くのが、2016年に開設されたトットちゃん広場の電車の教室です。黒柳徹子氏の自伝的名作『窓ぎわのトットちゃん』に登場するトモエ学園を忠実に再現したこのエリアには、かつて長野電鉄で実際に走っていたモハとデハの車両が静態保存されています。
電車の扉をくぐると、木製の温もりある床板と、当時の生徒たちが学んだ古い木製デスクが並びます。窓辺から差し込む柔らかな自然光、網棚に置かれたランドセル、黒板にチョークで書かれた時間割――。訪れた年配の旅行者は自らの幼少期に想いを馳せ、現代の子どもたちは珍しい電車の教室で楽しそうに机に向かいます。単なる写真撮影スポットにとどまらず、教育の原点を肌で感じられる体験型の空間として高い評価を集めています。
鑑賞の合間に立ち寄りたいのが、中庭に面した館内の絵本カフェです。編集部が実食検証した安曇野ちひろ美術館カフェメニューの中でも、特に注目すべきは信州の豊かな恵みを凝縮した限定メニューの数々です。
地元・松川村産のお米やりんご、旬の高原野菜をふんだんに取り入れたワンプレートランチは、素材そのものの甘みが引き立つ優しい味付け。サクサクのパイ生地に松川村産ふじりんごを贅沢に使ったアップルパイや、安曇野の清流で育まれたハーブを用いたオリジナルブレンドティーは、散策で程よく疲れた身体をじんわりと満たしてくれます。気候の良い季節には開放感あふれるウッドデッキテラス席がおすすめ。北アルプスから吹き下ろす爽やかな風を感じながら過ごす時間は、日常を忘れさせる贅沢なひとときです。