通常のヘッドホンを後ろから装着する際、音響工学の観点から見逃せないのが音質への影響と注意点です。一般的なオーバーヘッド型は、耳介(耳たぶ)の角度や頭頂部からの適切なダウンフォースを前提にドライバーユニットの角度が緻密に設計されています。
これを後頭部から無理に装着すると、イヤーパッド下部に隙間が生じる「アコースティック・リーク(音漏れ)」が発生します。密閉が解かれることで、特に100Hz以下の重低音が最大で10dB近く減衰し、全体としてスカスカとした迫力のないフラットな音像に変化してしまいます。
さらに見落としがちなのがヘッドホン左右の向きの反転問題です。通常のヘッドホンをそのまま後ろに倒すと、本来の左チャンネル(L)が右耳に、右チャンネル(R)が左耳に配置されてしまいます。動画視聴や音楽鑑賞では違和感程度で済む場合もありますが、FPSゲームの足音定位や立体音響コンテンツでは致命的な情報伝達ミスを招きます。左右を正しく保つためには、ヘッドホン自体を前後逆にして装着するなどの工夫が必要ですが、その場合イヤーカップの傾斜が耳の形状と逆行し、フィット感が損なわれるジレンマが生じます。