「0.3048m」という小数点以下4桁に及ぶ半端な数値を目にしたとき、「なぜキリの良い30cmにしなかったのか」と疑問を抱くのは自然な反応です。この疑問を解き明かす鍵は、フィート由来足のサイズと、大西洋を挟んだヤードポンド法歴史と経緯にあります。
フィートの語源が英語の「foot(足)」であることは広く知られています。古代メソポタミアや古代ギリシャ、ローマ帝国において、自らの「足の裏の長さ(かかとから親指の先まで)」を一歩の基準として測った身体尺が起源です。ヨーロッパ各地では、時の権力者である国王の足のサイズがその国の標準フィートとして布告されてきました。有名な伝承では、イングランド国王ヘンリー1世やフランク王国のカール大帝の足の長さが基準になったと語り継がれています。
靴を履いた状態の男性の足は概ね27cm〜30cm程度になるため、生活実感としての「1尺(約30.3cm)」に極めて近い実用的な長さとして定着しました。ところが近世に至るまで、ロンドンで定められたフィート、パリのフィート、北欧のフィートでそれぞれ長さが数ミリから数センチずつ異なっており、国際貿易において激しい混乱を招いていました。
この混乱に終止符を打ったのが、1959年7月1日に発効した「国際ヤード・ポンド協定」です。アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの主要6カ国が調印し、メートル原器(メートル法)を絶対基準として、「1ヤードを正確に0.9144メートルとする」と法的に合意しました。この定義を基に、3分の1である1フィートが「0.9144 ÷ 3 = 0.3048メートル」と確定したわけです。つまり、人間味あふれる「王様の足の裏」の歴史的実寸を、近代科学の「メートル」という器に当てはめて厳密固定した結果生まれたのが、0.3048mという数値でした。