広島の原爆ドームはなぜ倒壊を免れた?解体危機を覆した知られざる真相について見逃せない 注意点を分かりやすく解説いたします。
1996年12月、メキシコ・メリダで開催された世界遺産委員会において、原爆ドームはユネスコの世界文化遺産に正式登録されました。適用された登録基準は「顕著で普遍的な意義を持つ出来事や生きた伝統などと直接関連するもの」という【基準(vi)】のみの単独適用であり、これは極めて異例の措置です。
登録にあたっては、戦争責任の文脈を巡るアメリカの留保表明や、アジア諸国の被害感情を理由とした中国の慎重姿勢など、激しい外交的議論が交わされました。しかし最終的には、「二度と繰り返してはならない人類の過ちを記憶し、核兵器廃絶と恒久平和を訴える記念碑」としての普遍的価値が国際社会に認められたのです。
遺産名(国)登録年・登録基準象徴する歴史的事象・悲劇現代における主な保全課題原爆ドーム
(日本・広島)1996年登録
基準(vi) 単独人類史上初の核兵器使用による壊滅的惨禍と平和への希求崩壊寸前の状態を維持する耐震化、煉瓦・モルタルの風化防止アウシュヴィッツ=ビルケナウ
(ポーランド)1979年登録
基準(vi) 単独ナチス・ドイツによる組織的なホロコースト(大量虐殺)木造バラック群の老朽化、遺品(靴や鞄)の有機的劣化対策ロベン島
(南アフリカ)1999年登録
基準(iii), (vi)アパルトヘイト(人種隔離政策)下の政治犯収容と民主化闘争島嶼特有の塩害、フェリー輸送など過密観光による環境負荷ビキニ環礁核実験場
(マーシャル諸島)2010年登録
基準(iv), (vi)冷戦期の大気中核実験による海洋汚染と第五福竜丸の被災海面上昇・気候変動による浸食、残留放射線による立ち入り制限
これらの「負の世界遺産」と比較すると、原爆ドームの特異性が際立ちます。他の遺産が広大な敷地や収容所全体を保全しているのに対し、原爆ドームは都市中心部の日常風景の中にむき出しの被爆建造物が単独で現存している点において、世界でも唯一無二の緊張感を放ち続けています。