市場やスーパーの鮮魚コーナーで消費者が最も誤解しやすいポイントが、加熱用生食用牡蠣の違いです。SNSやネット掲示板上でも「生食用のほうが鮮度が良く、加熱しても美味しいのではないか」という声が散見されますが、これは食味の観点から見ると完全に真逆の選択です。
生食用牡蠣は、食品衛生法に基づく規格基準をクリアするため、指定海域で採取された後、紫外線殺菌された海水の中で2〜3日間の絶食状態に置かれます。この浄化工程によって体内の雑菌やウイルスは排出されますが、同時に蓄えられていた栄養分やグリコーゲン、アミノ酸といった旨味成分まで消費され、身痩せが生じてしまいます。
対して加熱用牡蠣は、栄養豊富な沿岸近くの海域で育ち、浄化による絶食期間を経ずに水揚げ直後に出荷されます。そのため、身に蓄えられたグリコーゲンの含有量が非常に高く、熱を通したときに溢れ出す濃厚なダシと強いコクは加熱用ならではの圧倒的な特長です。特に広島牡蠣旬の時期にあたる1月中旬から2月下旬にかけては、越冬のためにエネルギーを蓄え、身の肥大化と旨味濃度がピークに達します。