本作のキャラクター造形における最大の妙は、一見すると記号的な魔法少女アニメの役割配置(ドジな主人公、頼れる先輩、猪突猛進な親友、クールな転校生、孤高のライバル)を踏襲しながら、その内面において徹底して人間臭い生々しさと葛藤を抱かせている点にあります。
企画原案の虚淵玄(ニトロプラス)とキャラクター原案の蒼樹うめ、そして新房昭之監督の三位一体によって生み出された少女たちは、実力派キャスト陣の神がかった声の演技によって血肉を与えられました。
以下は、物語の中心となる見滝原中学校の生徒および関係者の基本プロファイルと相関関係です。
- 鹿目まどか(CV:悠木碧):見滝原中学校2年生。控えめで心優しい少女。自分には何の取り柄もないと思い悩んでいたが、他者のために全てを投げ打つ底知れぬ利他精神を秘める。声優・悠木碧の無垢でありながら芯の通った演技が、終盤の神性を際立たせる。
- 暁美ほむら(CV:斎藤千和):物語開始時に転校してきた謎めいた少女。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能に見えるが、その実態は「まどかを救うためだけに無数の時間遡行を繰り返してきた元・内気な病弱少女」。斎藤千和が見せる冷徹さと狂気的な情念のグラデーションは圧巻。
- 巴マミ(CV:水橋かおり):見滝原中学校3年生。まどかやさやかの先輩であり、見滝原を守る熟練の魔法少女。優雅で頼もしいお姉さんとして振る舞うが、内面は家族を喪った深い孤独と死への恐怖に怯える。水橋かおりの透明感ある演技が、後に訪れる絶望のコントラストを鋭く強調する。
- 美樹さやか(CV:喜多村英梨):まどかの親友で活発な少女。想いを寄せる幼馴染のバイオリニスト・上条恭介のために魔法少女の契約を結ぶ。「正義の味方」に固執するあまり、自らの理想と汚濁した現実のギャップに最も苛まれる。喜多村英梨の感情の振れ幅を克明に刻んだ悲痛な叫びは物語の転換点となった。
- 佐倉杏子(CV:野中藍):隣町の風見野からやってきた利己主義を装う魔法少女。常に何かを食べている。かつて自身の願いで家族を崩壊させた過去を持ち、「自分のためだけに魔法を使う」と決めていたが、さやかの生き様にかつての自分を重ね、心を開いていく。野中藍のハスキーで泥臭い好演が光る。
- キュゥべえ(インキュベーター)(CV:加藤英美里):少女たちに契約を持ちかけ、願いを一つ叶える代わりに魔法少女にする正体不明の生物。愛らしい外見とは裏腹に、感情を持たず徹底的な合理性と損益計算のみで動く。加藤英美里の感情を排除した無機質なトーンが、視聴者に類を見ない生理的恐怖を植え付けた。
【キャラクター相関の構図】
・まどか ⇔ ほむら:保護対象と庇護者に見えて、実は「神」と「愛の執着者」という不可逆な因果で結ばれた関係。
・さやか ⇔ 杏子:「自己犠牲への執着」と「自己保存への逃避」というコインの表裏。最終的に杏子がさやかの魂を孤独から救うために命を賭す共犯関係へ。
・マミ ⇔ 後輩たち:「救済者」として慕われながら、実情は「精神的依存の対象」を後輩たちに求めていた脆弱な疑似家族関係。
・キュゥべえ ⇔ 全魔法少女:搾取構造の「収穫者」と「家畜」。感情エネルギーの熱力学的回収という冷徹な食物連鎖。