PCOSは自覚症状が緩やかに進行するため、受診が遅れがちな疾患の代表格です。日常生活の中で早期に気づくための鍵となるPCOSの初期症状として、まず挙げられるのが月経周期の乱れです。数カ月にわたって生理が来ない希発月経や、周期が不規則になる生理不順から無排卵月経に至る経緯を辿る女性が多く見られます。
生理のような出血があっても、実際には排卵を伴わない破綻出血であるケースも少なくありません。これを見極める最大の指標が多嚢胞性卵巣症候群における基礎体温の推移です。正常な周期であれば排卵後にプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌によって体温が0.3度以上上昇する二相性を示しますが、無排卵が続いている場合は低温期のまま体温が上がらず、平坦な「一相性」のグラフを描き続けます。
さらに、ホルモンアンバランスに伴う身体的な変化も見逃せません。成人を過ぎてからの難治性ニキビ、額やあご周りの皮脂分泌の増加、腕やすねの毛が濃くなる多毛化、急激な体重増加などは、血中アンドロゲン値の上昇を示唆する重要なサインです。
日本生殖医学会および日本産科婦人科学会が定める多嚢胞性卵巣症候群の診断基準は、以下の3項目すべてを満たす場合と厳格に定義されています。
- 1. 月経異常:無月経、希発月経、または無排卵周期症が認められること。
- 2. 多嚢胞卵巣:超音波断層検査で、両側または片側の卵巣に直径2〜9mmの小卵胞が10個以上確認されること。
- 3. 内分泌異常:血中LH基礎値が高値かつFSH基礎値が正常、あるいは血中アンドロゲン(テストステロン等)が高値であること。
初診時に行われる超音波検査や血液検査にかかる多嚢胞性卵巣症候群の検査費用は、月経異常を主訴として保険診療で受診した場合、3割負担でおおよそ5,000円〜8,000円前後が一般的な相場となります。将来の選択肢を守るためにも、生理の遅れを放置せず早期に確定診断を受ける姿勢が求められます。