『キン肉マン』という作品を語る上で欠かせないのが、原作者であるゆでたまご(原作担当・嶋田隆司氏、作画担当・中井義則氏)の骨の髄まで染み込んだプロレスへの偏愛です。1970年代後半、大阪の少年だった2人がテレビにかじりついて目撃した昭和プロレス黄金期の熱量こそが、すべての原点となっています。
連載初期はギャグ漫画としての色彩が強かった本作ですが、読者の爆発的な支持を集めて本格的な格闘路線へと舵を切った背景には、当時日本中を熱狂させていた新日本プロレスや全日本プロレスの過激なアングル(抗争劇)の存在がありました。善玉と悪玉が入り乱れ、リング上の怨恨がタッグマッチや軍団抗争へと発展していくプロット構造は、アントニオ猪木氏が掲げた「過激なプロレス」や、ジャイアント馬場氏が守り抜いた「王道プロレス」のダイナミズムそのものです。
2026年現在のカルチャーシーンを見渡しても、その影響力は衰えるどころか再燃しています。2024年7月から放送された完全新作アニメ『キン肉マン 完璧超人始祖編』では、現代のアニメーション技術とCGアクションが融合し、プロレス特有の「技のタメ」や「受身の衝撃音」が生々しく映像化されました。往年のプロレスファンのみならず、現代の総合格闘技やエンタメプロレスに慣れ親しんだZ世代の視聴者層の間でも、技のリアリティや元ネタのレスラーを考察するムーブメントが活発化しています。