「せむし」の追放は、映画・文学・アニメーションの表題にも劇的な変化をもたらしました。もっとも顕著な例が、フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの名作『Notre-Dame de Paris』です。
日本では長らく『ノートルダムのせむし男』の邦題で親しまれていましたが、1990年代以降、各出版社は文庫のタイトルを『ノートルダム・ド・パリ』へと改題。さらに1996年に公開されたディズニーのアニメーション映画では、『ノートルダムの鐘』という独自の邦題が採用されました。配給側が家族向けエンターテインメントとして差別的文脈を徹底的に排除し、物語の象徴である大聖堂の鐘を前面に出す判断を下したためです。
昭和のミステリー界を牽引した江戸川乱歩や横溝正史の作品群でも、「異様な風体」を演出する小道具としてこの言葉が頻繁に登場しました。乱歩の代表作『蜘蛛男』などでは、犯人の不気味さや異形性を強調するために身体的特徴が扇情的に描写されています。これらについて現代の大手出版社は、改ざんによる作品改変を避けつつ、巻末に「今日から見れば不適切な表現が含まれますが、作品の時代背景と歴史的価値に鑑み、そのまま収録しています」という注意書きを付記する手法を標準としています。