タイパ(タイムパフォーマンス)が重視され、スマホ片手に倍速でドラマを見る時代になった。しかし、『古畑任三郎』における木村拓哉の登場回には、画面から目を離せない「魔力」がある。無言の数秒間、目線の動き、指先の震え。そのすべてに意味があるからだ。
現代の多くのドラマが説明過多なセリフに頼るなか、当時の演出は役者の「佇まい」にすべてを懸けていた。若き木村拓哉の圧倒的なカリスマ性と、ベテラン田村正和の軽妙かつ重厚な演技。この二つの個性がぶつかり合うことで生まれる化学反応は、CGや派手なアクションに頼らない、演劇的な緊張感に満ちていた。