なぜ、これほどまでに聴く者の胸を締め付けるのか。その理由は、楽曲に緻密に織り込まれた心理描写と、主人公の「圧倒的な無力感」にある。タイトルにある「高嶺の花」という言葉が示す通り、相手は自分など到底手が届かない高貴な存在だ。しかし、この楽曲の真骨頂は単なる憧れを描くにとどまらない。
歌詞の中で展開されるのは、あまりにも突飛で、それでいて誰もが一度は脳内で繰り広げたことのある壮大な妄想劇だ。「夏フェス」や「偶然の出会い」、あるいは「魔法」といった現実離れしたシチュエーションを夢見ながらも、次の瞬間には冷酷な現実に引き戻される。作詞を手掛けた清水依与吏は、理想と現実の残酷なギャップを、極めてキャッチーなメロディに乗せて描いてみせた。惨めで情けない自分を肯定せず、さりとて見捨てきれない人間の弱さ。これこそが、世代を超えて共感を呼び続ける切ない片想いの本質と言える。