メディアで見せる明るい笑顔の裏で、指導者としての苦難と葛藤は絶えない。自分がマットに上がれば十数秒で決められる技を、なぜ選手は本番で出せないのか。自身が規格外の天才であったからこそ、壁にぶつかる選手の気持ちを理解するまでに相応の時間を要したという。
「教えすぎない」ことの難しさに突き当たる夜もある。答えをすぐ与えれば、選手は自ら考える力を失う。失敗を恐れずにマットへ送り出す恐怖と戦うのは、実は指導者の側だ。
そこで取り入れられたのが、選手個々の生活習慣や精神状態まで包括的にケアするアスリートマネジメントの手法だ。試合前のアドバイスだけでなく、日頃のコミュニケーションを通じて心理的安全性を作り出す。競技者としてだけでなく、一人の人間として成長させる姿勢が、若い世代との深い信頼関係を築いている。