2019年、池江が白血病を公表した時の衝撃は日本中を包んだ。抗がん剤治療の過酷さ、アスリートとしての未来が完全に閉ざされたかのような絶望感。そんな極限状態の彼女に近づいたのがなべおさみだった。なべは自身の「気功」や「手かざし」でがんを治せるなどと公言し、過去にも多くの著名人を施術してきたと主張していた人物だ。
なぜ、世界レベルのアスリートがこのような非科学的な存在を頼ったのか。そこには、近代医学だけでは埋められない「死への恐怖」と「孤独」があった。肉体が崩壊していく恐怖の中で、誰かにすがりたいと願うのは、人間として極めて自然な防衛本能である。