では、医学的・科学的な観点からこのふたつに直接の関係はあるのだろうか。結論から言えば、ますかけ線があるからといって即座にASD(自閉スペクトラム症)であると診断されるような臨床的根拠は存在しない。
しかし、遺伝学や皮膚線条学(Dermatoglyphics)の世界では、手紋と脳の発達期における物理的な重なりが長年研究されてきた。受胎後10週から19週目にかけて、胎児の手のひらのシワ(手紋)が形成される時期は、まさに脳の中枢神経系が目覚ましい発達を遂げるタイミングと重なる。
染色体異常や一部の遺伝的症候群において、掌を横断する単一屈線(手相でいうますかけ線)の出現頻度が高まることは医学的ファクトだ。しかし、広範な発達特性であるASD全体との間に明確な因果関係が立証されているわけではない。解剖学的な発生時期の同調性が、観察者の知的好奇心を刺激し続けているというのが学説の最前線だ。