今作で最も話題を集めているのが、物語の中盤に訪れる「10分間に及ぶ無言の食卓シーン」である。言葉は一切交わされない。ただ、食器の触れ合う音と、二人の呼吸、そして視線の交差だけで人間の交感が描かれる。
劇評家の小林文彦氏はこう分析する。「言葉に頼らず、身体の佇まいと空気感だけでこれほどの情念を表現できる役者はそういない。清水の重厚な受けの演技と、山下の鋭利な感情の波動が見事に噛み合っている。2026年の演劇シーンにおける一つの到達点と言っていい」。観客もまた、息をするのも忘れてその場に釘付けになる。